1年前の記事でも書きましたが、僕は23の時に買ったユーノス・ロードスターをずっと所有し続けてきました。去年、子供が生まれることになったことをキッカケにデミオを購入しましたが、将来、今よりももっと稼ぎが良くなるとかもっと土地が安いエリアに引越すとかして、2台分の駐車場代が出せる状況になったら復活させたいということで、ロードスターは一旦車両登録は抹消したうえで、保管しておこうということになりました。

群馬県は下仁田に、石井自動車さんというお店がありまして、一見すると普通の町の自動車整備工場といった感じなんですが、実はロードスター乗りの間では全国的に知られた有名なロードスターの専門ショップで、こちらでは、年間契約でロードスターを預かってくれるというサービスもやっています。というわけで僕のロードスターもこのサービスを利用して、去年我が家に新たにデミオがやってくるのと入れ替えに保管をお願いしました。

そして1年が経ち、決断の時がやってきました。
もちろん、まだ2台を手元に置いておける状況ができたわけでもないので、選択肢は2つ。契約を延長して引き続き預かってもらうか、それとも完全に手放してしまうか。

引き続き預かってもらうとしても、また走らせることができるまでには、この先あと数年はかかるということ。そしてもしその時が来たとしても、2シーターのこのクルマでは、家族3人でいっしょに乗ることはできないというあたりまえの事実。僕自身は、息子を助手席に乗せて走ることを夢見たりもしてましたが、AT限定免許の妻にはそれもできないこと。そして子供が手がかからない年齢になるまでは、夫婦2人で乗るということもないだろうこと。そういった諸々を考えて、やはり手放すことにしようと決めました。

手放すとなると、次に問題になるのは、ではこの後このロードスターはどうするのか。オークションに出品するなどしてネット上で次のオーナーを探すことも考えましたが、クルマの状態はというと、エンジン等の機関系は問題ないものの、外装はそれなりに痛んでいたり、内装はDIYでいろいろ自己流に手を加えてしまってオリジナルとはだいぶかけ離れてしまっています。そして一番の問題は、仮にオーナー候補が現われたとしても、実車は群馬に行かなければ見られず、車検も切ってあるので試乗もできないということ。

次のオーナーも見つけられないとなると、あとに残された道はもう解体しかないのか。年式のわりには走行距離もそんなに多くもなくエンジンも快調に回るし、まだまだ走れるはずなのに。僕にとってはかけがえのないクルマなのに、他にこいつに価値を見い出してくれる人は誰もいないのだろうか。そして僕自身の決断によってこいつは鉄屑にされる運命で、もう2度と道を走ることはないのだろうか。

そんなことを考えながら、まだその先の答えを出せないまま、最後にこの目でもう一度その姿を見るため、そして (記憶には残らないかもしれないけど) 息子に一度見せておきたいという思いで、群馬へ向かいました。

石井自動車の工場に着き、そこから少し離れた場所にある保管用のガレージへ移動して、1年ぶりにロードスターの姿を目にした時は、いきなりいろんな思いがこみあげてきて、うっかり涙が出そうになるのを必死にこらえて、しばらく声が出せませんでした。なんとか気持ちを落ちつけて、石井社長に今後のことについて相談したところ、お金にすることを考えないのであれば、現状ママで乗れるクルマとして割り切れる人がいないともかぎらないので、お店に置いて展示してもいいというふうに言っていただきました。

このクルマがまだ走り続けられる可能性があるなら、それ以上のことは望むべくもありません。ということで、15年間僕のものだったロードスターは、石井自動車さんへ譲渡することになり、今後を託されることになりました。これでもう完全に僕の手を離れてしまうわけで、もちろん寂しくはありますが、たぶん今の状況で考えられる中で一番いい形に落ち着いたと思うので、気持ちとしてはすっきりしました。今はこいつがこの先またいいオーナーさんに巡り会えて、再び道を走り出す日が来ることを祈りたいと思います。

というわけで、ある意味晴れ晴れとした気持ちで最後の記念撮影。息子も助手席ではなく運転席に座らせてみましたがご満悦の様子でした。

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ガソリンエンジンを搭載したクルマは、数年後であっても無くなることはないとしても、次第に稀少な存在になっていき、街中ではガゾリンを供給する施設が減って、入手が困難になっているかもしれません。将来、子供が成人/独立して、もしまたロードスターを手に入れる時が来たとしても、その時に手に入るロードスターは、今とは全く別のものになっているでしょう。時代は変わるものだし、自分の生活もまた変わっていきます。僕が20代から30代にかけて、このユーノス・ロードスターという、ガゾリンエンジンを搭載した本物のスポーツカーに乗り続けてきて感じた様々な感動や興奮は、この時代にこの年齢の僕が出会った偶然によるもので、それは本当に幸福な偶然だったと思います。