元同僚が読んで怒りに震えていたこの記事、

エアロスミスのアルバムが売れなくなったのは市場変化のせいなのか?
彼らの作品が売れなかったのは、市場変化以前に、コンテンツに魅力がなかったから、つまり、単純に曲がつまらなかったからではないのか、と思ったためです。

どんなもんかと思って読んでみたけど、過去のデータとか数字のなんちゃって分析っぽいあたりはくだらないとは思ったけど、意外とそんなにひどいもんでもないかなと思いました。あといろいろ矛盾や突っこみどころがないわけではないんだけどそのへんはまあ流してもいいかなというレベルかと。

そこで最後に、もし私がエアロスミスの戦略コンサルタントであったならどういう改善策を打ち出すか、というのをまとめてみました。音楽ビジネスの構造的な部分や、契約関連の事情などはよく分かっていないので、荒唐無稽な妄言になってるかもしれませんが、一応書いておこうと思います。

多くの人の反感を買ってるのはここからのくだりだと思うんだけど、たしかにまあメチャクチャなことが書いてあります。とはいえ元々80年代の再ブレイクの時も外の血を入れてバンドに鞭打ったら成功したわけだし、今また新たな挑戦をってことであれば、例えばここに書いてあるような荒唐無稽なコラボなんかは、企画としてはそんなに悪くないとは思う。まあエアロの場合はストーンズ(っていうかミックジャガーか)ほど器用じゃないだろうけど、まあそっち方面との相性は悪くないよね。

ただし、市場の変化はもう厳然としてあるしユーザーの関心の多様化は無視できないわけで、良い作品を作れば昔と同じレベルで売れるはずなんてことはさすがにこの人も考えてないでしょう。もちろん作品の質の良し悪しもあるけれど、それ以前にどうにもならないものとして市場の変化は受け止めなければならない現実だと思う。

さらにはまた、今や発売前のプロモーションとして全曲フル試聴とか当たり前になりつつあって、実際に聴いて気に入って初めて買ってもらえるというのが現状だったりするわけで、もはやかつてのように固定ファンからの指名買いは期待できないし、ヒット曲の力だけで流動的なリスナーにアルバムを丸っと買ってもらうというのも難しくなってきてるのです。

つまりアルバム制作に取り組むことは、以前にも増してハイコストローリターンな仕事になっているんです。以前のようなセールスは望むべくもないんだけど、それでもアルバムを売りたいと思ったら作る側もこれまで以上に手を抜けなくなってる。外の血を入れるのはいいけれど、安易に全曲feat.○○○とかの話題性だけで売ろうとしても、お金ばっかりかかっても得られる結果は期待値以下なのは目に見えているはず。

今回のエアロというかジョーイの発言も、そもそもバンド自身がそういうことにもう疲れちゃって、アルバムを売るってことにモチベーションを見出せなくなったって話だよね。バンド自身がそんなテンションにもかかわらずコラボだなんだとあれこれ策を弄したところで、バカ売れするような作品なんかできるわけがない。まあだからといってバンドとしてのエアロがもうダメかってのとはまったく関係なくて、ただ単純に俺らはそういう商売からはもう降りるよっていう宣言をしたってだけのこと。

アルバムというフォーマットは本当にもう終了なのだろうか。

実際もうそう言われるようになって久しいですよね。いや、でも今だからこそ実はアルバムなんだと思うんですよ。単発のシングル曲だったらその場で聴いておしまいかもしれない。そうではなく今ちゃんとしたリスナーを掴んで音楽にきちんとお金を払ってもらおうとするのであれば、アルバムを聴いて気にいってもらって、もっと繰り返し聴きたいと感じてもらえるようなものを作るというのが、べつに理想論とかじゃなくてそれこそが正攻法だと思うのです。

CDだろうとダウンロードだろうと関係ないんですよ。個々のバラバラな曲じゃなくちゃんとひと固まりの作品として構成されたアルバムというところに意味があるんです。べつに気張って壮大なコンセプトアルバムとかぶち上げろって話じゃないよ。アーティストが音楽と向き合って1枚のアルバムというフォーマットに10数曲をまとめてパッケージングするという過程において、本当に優れた内容であればそこに後づけでも何かしらテーマというか1本筋が通ったものができるはずだと思うんですよ。そしてその結果として、ただの曲の寄せ集めではない1時間弱の連続した音楽体験を提供するアルバムという1つの作品になるわけです。

おれ自身はそういうのが好きだから、音楽を聴く時はいつも必ずアルバム単位で能動的に選択してアルバムの曲順通りに聴くし、iTunesのシャッフル機能とか自分はほとんどといっていいほど使いません。アナログからデジタルになって、音楽の入れ物が変わっても、アルバムというアートフォームはこれからも有効だと思うし、現在のアルバム軽視の流れが変わってまた良質な作品が次々と生まれるようになるといいなと思って書きました。



パーマネント・ヴァケイション
エアロスミス
USMジャパン
2013-06-12